「整理整頓ができない」「落ち着きがない」ことへの手立て
プロフィール: Tさん、30歳女性、主婦(以前は小学校教員)
教員として働いていたころ、各クラスに1人くらいはADHD、もしくはその疑いのある児童がいました。私も何度かADHDの児童を担任したことがあるので、その時の経験をもとにお話をします。
ADHDの特徴の一つとして、「身の回りの整頓が苦手」ということがあります。
小学校では、登校し、朝の会が始まるまでにランドセルの中身などを机に入れる、宿題を提出するなどの支度をしてから席に座るのが日課です。
しかし、ADHDの子は何かをしているときに他のことに目が行ってしまうと、途中で他の行動に移ってしまい、支度がなかなか終わりません。宿題は床の上、ランドセルは机の上、手提げ袋はロッカーの上にある状態でなぜか読書をしている・・・ということも頻繁にあります。
授業中も、1本鉛筆を出したのに、それをしまわずにまた新しい鉛筆を机に出すので、机の上や机の下に鉛筆がたくさん転がっているということがあります。
これらを改善するために、私はいくつかの手立てを考えました。
1つ目は、とにかくすべてに記名をさせるということです。何をどこにしまったか忘れてしまったり、教室中にものが落ちていたりしたので、とにかくその子のところにきちんと道具が戻るようにしました。
2つ目は、全体指導で整頓タイムを設けることです。ADHDの子だけでなく、整理整頓が苦手な子は多いです。その子だけを指導すると「あの子はダメなんだ・・・。」と他の児童に思わせてしまう可能性があるので、全体で「今から2分間、身の回りを整頓しよう。」という時間を設けることにしました。頻繁に整理整頓タイムを設けることで、ぐちゃぐちゃで手が付けられない・・・という状態になることが減りました。
3つ目は、どのようにしまえばいいか写真や絵で具体的に示すようにしました。片づけたいとは思っていても、どうしまったらいいかわからないことがあります。そのために、実際に教師が整頓した所を写真に撮り、それを見ながら片づけさせるようにしました。口で言ってもよくわからないことも、写真を見れば即伝わります。さらに大人が口出ししなくても自分で片づけができるので、本人の自信にもつながります。
他にも細かな手立てをいくつも打ちましたが。主にこれらを行うことで、以前よりも整頓の面で気にならなくなりました。
もう一つ、ADHDの特徴としてあげられるのが、整理整頓にもつながることですが「落ち着きがない」ということです。授業中、なぜか突然歩き出したり、じっとしていられないということがありました。そうならないためにも、メリハリのある授業を意識して行いました。
45分ずっと座っているのではなく、友達と話し合いタイムを設けて、席を出歩いてもよい時間をとったり、どうしてもADHDの子が我慢できなくなりそうだったら、その子に「黒板にプリントを貼るのを手伝ってくれる?」と手伝いをお願いしたりして対処しました。
ADHDには効果的と言われている薬もあります。保護者とお医者さんの判断で飲むかどうかは決まりますし、薬が合わない体質などもあるので一概には言えませんが、私が知っている児童では多くの児童が薬を飲んで落ち着きのなさが無くなり、じっとしていられるようになりました。
上記に上げたのはすべて学校でのことですが、家庭でも応用できることがたくさんあると思います。片づけさせたいときには写真にとって片づけ方を示すなどの手立ては家庭でもすぐに実行できます。親と一緒に片づけようタイムを作ってもいいと思います。
宿題など落ち着きがなくてできないときには、なるべく周りの刺激を減らす(テレビのある部屋でやらない、机の上には何も置かないなど)ことも効果的だと思います。
ADHDの子が「自分はダメだ・・・。」と、自分に自信が持てなくなってしまわないように、周りの大人が色々な手立てを打ってあげられたら・・・と思います。
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